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アーティストインタビュー ~山田 憲史~ vol.1(全2回)

今回のアーティストインタビューは、Vol.1とVol.2の2本立て。2021年夏に自身初となる個展[FORM]を開催されたフォトグラファーの山田憲史さんをご紹介します。

過去2度に渡ってエンブレムクルーのプロフィール写真を撮影いただくなど、エンブレムとは縁が深い山田さん。Vol.1では、2021年8-9月に行われた初の個展と20年近くに及ぶ創作活動への向き合い方について伺いました。

アーティスト(フォトグラファー):山田 憲史 / Kenji Yamada

1986年大阪生まれ
株式会社スタジオエビス勤務後、韓国ソウル滞在
2014年に独立、コマーシャルワーク、雑誌を中心に活動
2021年、初個展[FORM]を新宿 北村写真機店で開催
Instagram: @kenjilee05
HP: https://kenjilee.myportfolio.com/

初の個展「FORM」

2021年8月12日〜9月5日の25日間、新宿の北村写真機店6FのSpace Lucidaで初の個展を行いました。
過去に影響を受けたグラフィックアートから着想を得て、いつも追いかけていた景色が形に見える瞬間をカメラや印刷物を通し新たな形にしたいと思い制作しました。写真を通して新たな体験が出来ないかを考え、造形に執着し撮影し続けてきた59点の写真をビニールやアクリル等の異素材に印刷をしたり、光を当て透過で写真を写し込ませたり二次元の写真を立体的に見える様に構成しました。

(試行錯誤して制作した展示作品 ビニールに印刷されている)
(展示台に映り込む影が美しい アクリルキューブの作品)

創作活動への向き合い方の模索

今回の個展は、コロナという異常事態下でしたが、自分にとっては特別なタイミングで行えました。
というのも、この1-2年で、写真を仕事にしている自分に改めて向き合いたいと試行錯誤を繰り返していて、その積み重ねがぼんやりと形になり始めていたからです。

フォトグラファーとしてお仕事をさせていただいて十数年、クライアントやデザイナーさんに求められるオーダーに応える力は身に付けやり甲斐は感じていました。それ自体は生業としてのフォトグラファーには必要なスキルなのですが、時々「何に自分は心を動かされるのだろう?」「誰に届けたいのだろう?」という、素朴な疑問に行き当たるようになりました。それで、自分の心の動きを確かめる為のリハビリみたいな位置づけで、お仕事とは別に、何を撮りたいかを意識しながら撮る事を始めました、それが2019年5月くらい、東京から大阪に拠点を移した頃です。

そして、半年ほどしてコロナ禍という異常事態になってしまって。
フォトグラファーという自分の仕事は完全にストップしました。でも、医療従事者の方々など、ソーシャルワーカーと呼ばれる方たちは大忙しどころじゃない状況でしたよね。そういう状況に自分は無力だなって虚しさを感じたこともありました。でも殊更に、自分が今できることは何だろう?と考え、それを写真にする作業は加速していきました。

(最初の緊急事態宣言下、自宅のベランダで撮影した作品)

最初は作品にしようと意識して始めた訳では無かったですが、そういう活動が積み重なって、ぼんやりと、いつか形に出来たらなと考えていた時に、お知り合いの方から展示の話を頂きました。無名の自分が展示をやったとして来てくれるだろうか、という不安はありましたが、二度とこんな機会はないかもしれないと、持てる力はすべて出し切ろうと準備を始めました。

準備期間中は今まで以上に自分が作ってきた物やこれから作っていきたい事と向き合いました。
時代や人に合わせすぎると何の為の個展か分からない、でも自分の創作欲求を満たす事ばかり考えると人に喜んで貰う事から離れていく。自分の心が動いて撮影してきた写真をどうすれば人に伝わるかを想像して、沢山、試行錯誤して制作しました。



コロナ禍ならではの悩みと発信方法

初めての個展ですし、もちろん多くの方に来て欲しいという気持ちはあったのですが、コロナ禍での開催ということで、どう皆さんに呼びかけようか、とても悩みました。考え抜いた結果、普段はDMなど使って直接お誘いするところ、今回は敢えてFacebookやInstagramで不特定多数の方に発信する形式を取ることにしました。
コロナの捉え方って人それぞれ違うので、DMをもらうと「行きたいな、でも…」と重荷になってしまう方も居るかと思って。そういった状況も手伝って、ますます、どんな方がどれだけ来場してくださるのだろうと、全くの未知数でしたね。
そうして迎えた会期ですが、結果として、想像していた以上にたくさんの方に来場していただくことができて、嬉しくも驚きました。長時間在廊して作品を鑑賞してくれる方を会場で実際に見ることができたり、普段接点を持てないような方との出会いがあったり、後日、実際にお仕事に繋がった出会いもあって、手応えを感じています。

(山田さん渾身の59点の作品が展示された[FORM]  多くの人が足を運んだ)

展示の持つ力

自分のことを全く知らない方や、通りがかりでふらりと立ち寄られる方も多くいて、展示の意味というか、展示が人を惹きつける力についても考えさせられました。
コロナ禍で、人との接触や、人と集まることが長らく出来なくて、皆なにかしらのストレスを抱えていますよね。その点、展示は密にならずに作品を通して人や人の想いと接点を持てる場面だから、潜在的に求められていたのかもしれないとも思います。
今回の展示を通して皆さんの目に留まった自分の作品たちが、そういう心の渇きを癒すことに一役買っていたら、嬉しいですね。

山田憲史さんのインタビューはvol.2に続きます。